はじめに|「ジョン・ウィック」シリーズとは?
「ジョン・ウィック」シリーズは、2014年にスタートしたアメリカのアクション映画フランチャイズです。キアヌ・リーヴスが主人公・ジョン・ウィックを演じ、精巧な格闘術とガンアクションを組み合わせた「ガン・フー(Gun Fu)」と称されるスタイリッシュな戦闘シーンで世界中のファンを魅了してきました。
本シリーズの最大の魅力は、単なる派手なアクションにとどまらない点にあります。殺し屋たちが独自のルールに従って動く緻密な「裏社会」の世界観、主人公の孤独と悲しみを背景に持つ重厚なドラマ、そして映像美にこだわった演出が融合することで、他に類を見ない独自の世界が構築されています。
2014年の第1作から2023年の第4作まで約10年にわたって展開されたシリーズは、2025年にはシリーズ初のスピンオフ映画「バレリーナ:The World of John Wick」も公開され、その世界観はさらに広がりを見せています。この記事では、各作品のあらすじと見どころを徹底的に解説していきます。
第1作「ジョン・ウィック」(2014年)
あらすじ
かつて「ブギーマン」と恐れられた伝説の殺し屋・ジョン・ウィックは、愛する妻ヘレンを病気で亡くし、深い悲しみの中に沈んでいました。そんな彼のもとへ、亡き妻が「最後の贈り物」として子犬・デイジーを届けてくれていました。ジョンはデイジーに癒やしと希望を見出し、新しい生活を始めようとします。
しかし悲劇は再び訪れます。ロシアンマフィアのボス、ヴィゴ・タラソフの息子・ヨセフが強引にジョンの愛車を奪い、その際に子犬のデイジーをも殺してしまったのです。亡き妻の形見を失い、怒りに燃えたジョンは、かつての殺し屋としての顔を取り戻し、ヨセフへの復讐のために裏社会へと舞い戻ります。ヴィゴはジョンの圧倒的な実力を知っており、息子を守るためにあらゆる手段で彼を止めようとしますが——。
見どころ
第1作の最大の見どころは、何といってもシリーズの世界観を初めて体験できる新鮮な驚きです。殺し屋たちが独自のルールに従って運営される「コンチネンタルホテル」、殺しの対価として用いられる金貨、殺し屋たちだけが知る裏社会の掟……これらの設定が初めて明かされる興奮は格別です。
また、キアヌ・リーヴスが約3ヶ月のトレーニングを経て体得した「ガン・フー」のアクションが初披露される作品でもあります。銃撃と格闘術をシームレスに組み合わせた戦闘スタイルは、それまでのアクション映画の常識を覆すものでした。シンプルな復讐劇でありながら、伝説の男が怒りで覚醒していく様子は非常にカタルシス(爽快感)があり、多くの人がシリーズにのめり込むきっかけとなった作品です。
「愛犬の仇を討つために世界最強の殺し屋が動き出す」という、実にシンプルながらも強烈な動機設定も本作の魅力のひとつです。

第2作「ジョン・ウィック:チャプター2」(2017年)
あらすじ
第1作から少し後の時系列。ジョンは愛車を取り戻し、ようやく静かな生活に戻ろうとしていました。しかしかつての「血の誓約」——裏社会の掟として交わした古い約束——を理由に、イタリアのマフィア・サンティーノ・ダントニオがジョンの元を訪れ、姉のある人物の暗殺を依頼します。
掟を破ることは死を意味するため、ジョンはやむなく依頼を受けますが、仕事を終えた後にサンティーノはジョンを裏切り、追う側へと回ります。さらにサンティーノはコンチネンタルホテルの中でジョンに襲いかかり、ジョンはその場でサンティーノを殺害。これにより、聖域であるホテル内での殺しという「掟破り」を犯したジョンは、裏社会全体を敵に回すことになります。
見どころ
本作の見どころは、シリーズの世界観が大きく広がることにあります。ニューヨークからローマへと舞台を移し、より洗練されたビジュアルと壮大なロケーションのもとで展開するアクションシーンは圧巻です。特にカタコンベ(地下墓地)でのバトルシーンや、鏡の間でのクライマックスは映像的な美しさにも優れています。
また、裏社会のルールや組織の存在がより詳しく描かれ、主席連合(ハイテーブル)という世界規模の支配組織の存在も明らかになります。アクション規模も第1作から大幅にスケールアップしており、ジョンが1対多数の敵をどのように攻略していくかを見るだけでも、十分に楽しめる作品となっています。ラストの展開が第3作への期待を大いに高める、シリーズ中でも重要な位置を占める作品です。

第3作「ジョン・ウィック:パラベラム」(2019年)
あらすじ
「パラベラム」とはラテン語で「戦争に備えよ」という意味です。前作のラストで裏社会の掟を破ったジョンには1400万ドルもの懸賞金がかけられ、世界中の殺し屋に追われる身となります。タイムリミットは1時間——その間にジョンはかつての恩師を頼り、組織の本拠地・モロッコへと向かいます。
主席連合の使節・アジャックスはジョンの追跡とともに、ジョンを逃がした責任を問われるコンチネンタルホテルの支配人・ウィンストン(イアン・マクシェーン)にも制裁を課そうとします。窮地に立たされたウィンストンとジョンは、組織の本丸に挑む究極の決断を迫られます。
また本作では、スピンオフ「バレリーナ」の主人公・イヴが初登場。ジョンがルスカ・ロマのディレクター(アンジェリカ・ヒューストン)の元を訪れた際に、若き暗殺者の卵であるイヴとの出会いが描かれています。
見どころ
本作の見どころはとにかくアクションのスケールとバリエーションの豊富さです。開幕直後から息つく暇なく始まる怒涛のアクションシーンの連続は、シリーズの中でも特に高い評価を得ています。モロッコの砂漠でのバイクチェイスと格闘、図書館での静かな戦闘、そして黒ずくめの騎馬武者との戦いなど、各シーンが互いに異なる趣を持っています。
また、後のスピンオフ「バレリーナ」への橋渡しとなるシーンも含まれており、シリーズ全体の繋がりを感じさせてくれます。ドニー・イェンをはじめとする新キャストの参加も話題となりました。終盤のコンチネンタルホテルでの大バトルは見応え十分で、第4作へのつなぎとなるラストシーンは観客を驚かせました。

第4作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」(2023年)
あらすじ
「コンセクエンス」とは「結末」「因果応報」を意味します。前作でウィンストンに撃たれ、ビルから落下したジョンは一命を取り留め、主席連合への反旗を翻す術を模索していました。ジョンが見つけた唯一の活路は、主席連合のルールを利用すること——主席連合のメンバーとして認められた者との「決闘」に勝てば、自由の身になれるというものでした。
そのためにジョンは、かつての恩師でモロッコ出身のシャムール(ビル・スカルスガルド)の下へ向かい、主席連合のメンバー・グラモン侯爵への挑戦権を得ようとします。パリを舞台に繰り広げられる最終決戦。最強の殺し屋が、ついに自由をかけた最後の戦いに臨みます。
また本作では、目の見えない剣士・ケイン(ドニー・イェン)が主要キャラとして登場し、その圧倒的な強さと存在感でシリーズに新たな彩りを加えます。
見どころ
第4作はシリーズ最長(上映時間約169分)かつ最大スケールの作品です。見どころは何といっても、パリの凱旋門周辺での車と人間が入り混じる壮絶なカーアクションと、その後に続くサクレ・クール寺院の長い石段を舞台にした一大クライマックスです。特に石段のシーンは、ジョンが何度倒れても立ち上がりながら少しずつゴールへ近づいていく様子が、シリーズ全体のテーマを体現しているようで非常に感動的です。
俯瞰カメラで捉えた大阪コンチネンタルホテルでのシーンも見どころのひとつで、真田広之が演じるキャラクターとの共闘は日本のファンにとって特別な感動をもたらしました。ドニー・イェン演じるケインの盲目の剣士というキャラクター設定も秀逸で、ジョンとの関係性が本作の感情的な核を成しています。シリーズのひとつの結末として非常に完成度が高く、多くのファンの心を揺さぶった作品です。

スピンオフ「バレリーナ:The World of John Wick」(2025年)
作品概要
「バレリーナ:The World of John Wick」は、2025年8月22日に日本公開された「ジョン・ウィック」シリーズ初のスピンオフ映画です。主演は『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『ブレードランナー 2049』で知られるアナ・デ・アルマス。監督は『ダイ・ハード4.0』『アンダーワールド』のレン・ワイズマンが務めています。脚本には『ジョン・ウィック:パラベラム』のシェイ・ハッテン、さらに『プロミシング・ヤング・ウーマン』のエメラルド・フェネルも参加しています。
時系列的には、シリーズ第3作「ジョン・ウィック:パラベラム」と第4作「ジョン・ウィック:コンセクエンス」の間の出来事が描かれています。キアヌ・リーヴス(ジョン・ウィック役)、イアン・マクシェーン(ウィンストン役)、アンジェリカ・ヒューストン(ディレクター役)など、シリーズでおなじみのキャストも再登場します。また、亡きランス・レディックがコンシェルジュ・シャロンとして出演しており、ファンに感慨深い場面も用意されています。
あらすじ
主人公・イヴ(アナ・デ・アルマス)は、孤児を集めて暗殺者とバレリーナを育成するロシア系犯罪組織「ルスカ・ロマ」の出身。ジョン・ウィックを生み出したその組織で、彼女もまた殺しのテクニックを磨いてきた優秀な暗殺者です。
ある仕事の最中、イヴは亡き父親の死に関わる手がかりをつかみます。父を殺したのは、何世紀にもわたり暗殺者を育成してきた謎めいたカルト教団でした。復讐心に燃えるイヴは、コンチネンタルホテルの支配人・ウィンストンとコンシェルジュのシャロンを頼り、父の仇を討とうと教団の本拠地へと乗り込んでいきます。
しかしルスカ・ロマとその教団は、数百年前から相互不干渉の休戦協定を結んでいました。裏社会の掟を破ってしまったイヴに対し、ディレクターは組織の「先輩」であるジョン・ウィックを送り込み、事態の収拾を図ります——果たして、ジョンはイヴの敵なのか、それとも味方なのか?
見どころ
本作最大の見どころは、アナ・デ・アルマスの圧倒的なアクションパフォーマンスです。彼女はスタントの約9割を自ら行ったとされており、バレエで鍛えた身体能力を生かした優雅かつ力強い戦闘スタイルは、ジョン・ウィックとはまた異なる魅力を放っています。ドアやテーブルを巧みに利用した接近戦や、手榴弾・火炎放射器・スケート靴といった独創的な武器の使い方は、観客の想像を超えるものがあります。
ネオンライトに彩られたナイトクラブでのガンアクション、広大な雪原でのジョン・ウィックとの対峙シーン、そして歴史あるオーストリアの村・ハルシュタットを舞台にした終盤のバトルなど、ロケーションの多彩さも本作の見どころのひとつです。
「ジョン・ウィック」シリーズの代名詞である裏社会のルール描写もしっかりと引き継がれており、コンチネンタルホテルの独自文化やルスカ・ロマの組織描写がさらに掘り下げられています。シリーズのファンであればニヤリとできる設定の連続で、既存ファンの期待を裏切りません。一方で、主人公イヴの視点から物語が展開するため、シリーズ未見の方でも楽しめる入口としても機能しています。
また、ノーマン・リーダス(『ウォーキング・デッド』で人気)が演じる謎めいた新キャラクター・ダニエルの存在も、本作のドラマを深める重要なピースとなっています。Filmarksでの平均評価は3.9点(5点満点)と高い評価を獲得しており、スピンオフ作品としての完成度の高さが窺えます。

シリーズを通じたテーマと世界観
「ジョン・ウィック」シリーズを貫くテーマは、「愛と喪失」「自由への渇望」「ルールと掟の世界に生きることの苦しさ」です。ジョンは妻を亡くした悲しみから引退していた殺し屋でしたが、愛犬を奪われたことで再び裏社会に引き戻されます。そして一度踏み込んだ世界からは、なかなか抜け出せないという残酷な現実が描かれています。
スピンオフ「バレリーナ」のイヴもまた、幼い頃に父を失ったことを原動力として動いており、テーマの一貫性が保たれています。「誰かを愛した者が、その愛のために戦う」という普遍的な物語構造が、アクションの陰に常に存在していることが、シリーズが単なる娯楽作品を超えた深みを持つ理由のひとつといえるでしょう。
また、コンチネンタルホテルや金貨システム、主席連合(ハイテーブル)といった独自の設定が積み重なることで、シリーズを通じて「ジョン・ウィックの世界」が生きているかのようなリアリティを生み出しています。この精緻な世界観こそ、本シリーズが世界中で愛される最大の要因のひとつです。
まとめ|シリーズを楽しむためのポイント
「ジョン・ウィック」シリーズは、第1作から順番に見ることで世界観の深まりや登場人物の関係性をより深く楽しめます。各作品のつながりが強いため、できれば1作目から順に視聴することをおすすめします。
スピンオフ「バレリーナ:The World of John Wick」は、第3作「パラベラム」を見ておくとより楽しめますが、単体でも十分に楽しめる作品です。アナ・デ・アルマスのアクションとシリーズならではの世界観を堪能したい方には、ぜひ劇場やサブスクリプションサービスでの視聴をおすすめします。
これから「ジョン・ウィック」シリーズに初めて触れる方も、既存のファンの方も、この記事が鑑賞のガイドとしてお役に立てれば幸いです。ぜひ、裏社会の掟が支配するスタイリッシュなアクションの世界をお楽しみください。





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