70年代僕らを夢中にさせたカーペンターズ

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レコードに針を落とす時の、あの静かな緊張感。ラジオから流れてくるお気に入りの曲に、心を躍らせた日々。今思えば、70年代は音楽が特別な輝きを放っていた時代でした。ビートルズが解散し、ロックはよりハードに、より前衛的になっていく一方で、私たちの心にそっと寄り添い、優しく包み込んでくれる音楽がありました。それが、カーペンターズです。

リチャード・カーペンターとカレン・カーペンター。この兄妹デュオが紡ぎ出す音楽は、当時の若者たちの心を鷲掴みにしました。彼らの音楽は、まるで古き良き時代への郷愁と、未来への淡い希望を同時に奏でているかのようでした。今回は、そんな70年代のサウンドトラックとも言うべきカーペンターズの魅力と、今なお色褪せない名曲たちを巡る旅にご案内します。

カーペンターズとは? – 奇跡の兄妹デュオ

カーペンターズは、兄のリチャード・カーペンター(1946年生まれ)と妹のカレン・カーペンター(1950年生まれ)によって結成されたアメリカのポップス・デュオです。ピアノと作編曲、プロデュースを手掛けるリチャードの才能と、”奇跡の歌声”と称されたカレンのヴォーカルとドラム。この二つの才能が出会ったことで、音楽史に残る美しいハーモニーが生まれました。

1969年にA&Mレコードと契約し、翌1970年にバート・バカラック作曲の「遙かなる影((They Long to Be) Close to You)」をリリース。この曲が全米チャート1位を獲得する大ヒットとなり、カーペンターズの名は一躍世界中に知れ渡ります。以降、「トップ・オブ・ザ・ワールド」や「イエスタデイ・ワンス・モア」など、数々のヒット曲を連発し、グラミー賞を3度受賞するなど、70年代を代表するトップアーティストとしての地位を不動のものとしました。

しかし、その輝かしい成功の裏で、妹のカレンは精神的な苦悩と、自身の体重へのコンプレックスから摂食障害を患っていました。そして1983年2月4日、カレンは神経性無食欲症(アノレクシア)による心不全のため、32歳という若さでこの世を去ります。彼女の死は、世界中に大きな衝撃と悲しみをもたらしました。

カーペンターズの音楽の魅力

なぜ、カーペンターズの音楽はこれほどまでに私たちの心を惹きつけるのでしょうか。その魅力は、大きく3つに集約できるでしょう。

1. カレン・カーペンターの”奇跡の歌声”

カーペンターズを語る上で、カレンの歌声は絶対に外せません。彼女の声は、女性ヴォーカリストとしては珍しい低音域が魅力の「アルトヴォイス」。その声は、まるでビロードのように滑らかで、聴く者の心を優しく撫でるような温かみを持っています。

ただ美しいだけではありません。彼女の歌声には、喜びやときめき、そして言葉にできないほどの深い悲しみや孤独といった、人間のあらゆる感情が繊細に込められています。特に、その完璧な音程と、息遣いまで感じさせる表現力は、他の誰にも真似のできない唯一無二のものでした。「雨の日と月曜日は」で聴かせる物憂げな雰囲気から、「シング」で聴かせる希望に満ちた明るさまで、彼女は曲の世界観を見事に歌い分ける天才でした。

2. リチャード・カーペンターの緻密なアレンジ

カレンという最高の楽器を、最大限に輝かせたのが兄リチャードの存在です。彼は、作曲家として美しいメロディを生み出すだけでなく、卓越したアレンジャー(編曲家)であり、プロデューサーでした。

彼のサウンドの特徴は、何と言っても多重録音を駆使したコーラスワークにあります。カレン自身の声を幾重にも重ねて作られるハーモニーは、まるで天使の歌声が天から降り注ぐかのような、荘厳さと透明感に満ちています。また、ピアノやストリングス、管楽器などを効果的に使い、楽曲に洗練された彩りを加える手腕も見事です。ポップスを基調としながらも、ジャズやクラシック、カントリーといった多様な音楽的素養に裏打ちされた彼のアレンジは、シンプルに聴こえて、実は非常に緻密で計算し尽くされています。

3. 時代を超える普遍的なメロディと歌詞

カーペンターズの楽曲は、誰もが口ずさめるような、親しみやすく美しいメロディラインを持っています。複雑なコード進行や難解な展開に頼るのではなく、あくまでもメロディの美しさを追求する。この姿勢が、彼らの音楽を時代や世代を超えて愛される普遍的なものにしています。

そして、そのメロディに乗せられる歌詞の世界。愛の喜び、青春の輝き、そして人生のほろ苦さや孤独。歌われているテーマは、誰もが一度は経験するであろう普遍的な感情です。だからこそ、私たちはカーペンターズの歌に自分自身を重ね合わせ、共感し、励まされてきたのです。

僕らを夢中にさせた名曲たち – おすすめ10選

数ある名曲の中から、特に70年代の私たちが夢中になった、そして今こそ聴いてほしい10曲を厳選してご紹介します。

1. イエスタデイ・ワンス・モア (Yesterday Once More) / 1973年 When I was young, I′d listen to the radio… (若かった頃、よくラジオを聴いていた…) という歌い出しであまりにも有名な、カーペンターズの代名詞ともいえる一曲。オールディーズのラジオ番組を聴きながら、過ぎ去った日々に思いを馳せるというノスタルジックな内容の歌詞は、まさに私たちの心情そのものでした。懐かしくも切ないメロディは、聴くたびに甘酸っぱい青春時代へとタイムスリップさせてくれます。

2. トップ・オブ・ザ・ワールド (Top of the World) / 1972年 イントロの軽快なカントリー調のフィドルが流れてきただけで、心が弾むような幸福感に包まれるナンバー。愛する人と共にいる喜びを「世界の頂点にいる気分」とストレートに歌い上げた、ポジティブなエネルギーに満ちた楽曲です。日本ではCMソングとしてもお馴染みで、カーペンターズを知らない世代でも、この曲は聴いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。

3. 遙かなる影 ((They Long to Be) Close to You) / 1970年 カーペンターズの名を世界に轟かせた、記念すべき出世作。バート・バカラック作曲のこの曲を、リチャードの洗練されたアレンジとカレンの優しい歌声でカバーし、全米No.1を獲得。囁くように歌い出すカレンの声、美しいピアノの旋律、そしてフリューゲルホルンの温かい音色が完璧に調和した、珠玉のポップスです。

4. 青春の輝き (I Need to Be in Love) / 1976年 日本では本国アメリカ以上の絶大な人気を誇る、隠れた名曲。ドラマ『未成年』の主題歌に起用され、90年代にリバイバルヒットしました。愛に満たされたいと切に願う歌詞は、カレン自身の心の叫びであったとも言われ、彼女自身が最も気に入っていた曲だと伝えられています。彼女の孤独に思いを馳せながら聴くと、その歌声はより一層、深く胸に染み渡ります。

5. 雨の日と月曜日は (Rainy Days and Mondays) / 1971年 「雨の日と月曜日はいつも気が滅入る」という、誰もが一度は感じたことのある憂鬱な気分を歌った曲。物悲しいメロディと、それに寄り添うカレンの深みのあるアルトヴォイスが、聴く者の感傷的な心に静かに沁み入ります。間奏で聴かれるアルトサックスのソロも、楽曲の持つメランコリックな雰囲気を一層引き立てています。

6. 愛のプレリュード (We’ve Only Just Begun) / 1970年 もともとは銀行のCMソングとして作られた曲をカーペンターズが気に入り、レコーディングした一曲。結婚し、新しい人生を歩み始める若いカップルの希望に満ちた未来を歌っており、今やウェディングソングの定番として世界中で愛されています。カレンの温かく誠実な歌声が、輝かしい門出を祝福してくれます。

7. スーパースター (Superstar) / 1971年 レオン・ラッセルらの共作による楽曲のカバー。憧れのロックスターに恋するグルーピーの切ない片想いを歌った、少し大人びた内容のバラードです。ドラマティックなストリングスのアレンジをバックに、やるせない想いを情感豊かに歌い上げるカレンの表現力は圧巻の一言。カーペンターズの清純なイメージを良い意味で裏切る、深みのある名演です。

8. シング (Sing) / 1973年 「歌おう、歌おうよ、大きな声で」。シンプルでポジティブなメッセージが心に響く、希望に満ちたナンバー。アメリカの子供向け教育番組「セサミストリート」で歌われた曲のカバーで、バックで歌う子供たちのコーラスが、楽曲の持つ純粋な魅力を引き立てています。日本では合唱曲としても広く親しまれ、多くの人々に勇気を与えてきました。

9. プリーズ・ミスター・ポストマン (Please Mr. Postman) / 1975年 モータウンのガールズ・グループ、ザ・マーヴェレッツのヒット曲を、カーペンターズ流にアレンジしたご機嫌なポップチューン。オリジナルが持つロックンロールの躍動感に、リチャードの洗練されたアレンジとカレンの軽快なボーカルが加わり、全く新しい魅力を放っています。エレキギターのソロも印象的で、彼らの音楽性の幅広さを感じさせてくれる一曲です。

10. ふたりの誓い (For All We Know) / 1971年 映画『ラバーズ・アンド・アザー・ストレンジャーズ』の主題歌で、アカデミー歌曲賞を受賞した名曲のカバー。「愛とは育むもの」という誠実なメッセージを、カレンが優しく、そして真摯に歌い上げます。穏やかで美しいこのバラードは、「愛のプレリュード」と並び、結婚を祝う場で多く使われる定番曲となりました。

永遠に色褪せない、心のサウンドトラック

カレンが亡くなってから40年以上が経った今でも、カーペンターズの音楽は世界中で愛され、聴き継がれています。それは、彼らの音楽が単なる流行歌ではなく、人間の心に直接語りかける普遍的な力を持っているからに他なりません。

デジタル化が進み、あらゆる音楽が手軽に聴けるようになった現代だからこそ、カーペンターズの緻密に作り込まれた温かいサウンドは、より一層価値を増しているように感じます。彼らの音楽は、70年代という時代を生きた私たちにとって、青春そのものであり、心のサウンドトラックです。

もし、あなたがカーペンターズをまだちゃんと聴いたことがないのなら、ぜひ一度、静かな部屋でじっくりと耳を傾けてみてください。きっと、カレンの優しい歌声が、あなたの心に何かを語りかけてくれるはずです。そして私たちのように、あなたもきっと、この奇跡の音楽の虜になることでしょう。

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