Amazon Prime Videoで2025年3月1日から見放題配信されている映画「銀河鉄道の父」はもう鑑賞されましたか？
僕は3月5日に鑑賞しました。「銀河鉄道・・・」とあるように、「銀河鉄道の夜」を書いた宮沢賢治を題材とした映画です。宮沢賢治のことは知っていますが、彼の生い立ちは知りません。ましてや、彼のお父さんについてはまったく知り由もありません。本作を鑑賞して、宮沢賢治の父親、家族のことをすべてではありませんが、知る機会を得ました。今回は映画「銀河鉄道の父」について紹介したいと思います。
「銀河鉄道の父」とは？
映画「銀河鉄道の父」は、2023年5月5日に日本で公開されたヒューマンドラマで、監督は成島出、主演は役所広司が務めています。原作は、門井慶喜が2017年に発表し、第158回直木賞を受賞した小説「銀河鉄道の父」。宮沢賢治という日本を代表する詩人・童話作家の人生を、彼の父である政次郎の目線で描いた作品です。賢治の自由奔放で型破りな生き方と、それを見守り支える家族の愛情が中心に据えられており、明治から昭和初期の岩手県花巻を舞台に、宮沢家の波乱に満ちた物語が展開されます。
物語の主人公は、岩手県花巻で質屋を営む宮沢政次郎（役所広司）。彼の長男である賢治（菅田将暉）は、家業を継ぐべき跡取りとして育てられますが、「質屋は弱い者いじめだ」と拒否し、自分の道を追求します。農業大学への進学、人工宝石の製造、宗教への傾倒など、賢治の行動は常識から外れ、政次郎を困惑させます。それでも、政次郎は厳格な父親であろうとしながらも、息子への深い愛情からつい甘やかしてしまう姿が描かれます。
賢治の人生に大きな影響を与えるのが、妹・トシ（森七菜）の存在です。トシは賢治の最大の理解者であり、彼の才能を信じ続けます。しかし、トシが結核に倒れ、やがて亡くなると、賢治は深い悲しみの中で創作に打ち込むようになります。政次郎はそんな息子を励まし続けますが、賢治自身もまた結核に侵され、37歳という若さでこの世を去ります。賢治の死後、彼の作品が家族の手によって世に広められ、後世に高い評価を受けるに至る過程が、感動的に描かれています。
キャストには、役所広司、菅田将暉、森七菜のほか、賢治の母・イチ役に坂井真紀、祖父・喜助役に田中泯、弟・清六役に豊田裕大が出演。脚本は「かぐや姫の物語」の坂口理子が手掛け、音楽は海田庄吾が担当しています。映画は128分という上映時間の中で、家族の絆と個人の夢の間で揺れる人間模様を丁寧に描き出しています。
見どころ
1. 宮沢政次郎の視点から描かれる賢治の新たな一面
本作の最大の見どころは、宮沢賢治を「父の視点」から描くという斬新なアプローチにあります。賢治といえば、「銀河鉄道の夜」や「雨ニモマケズ」などの作品で知られ、その詩的で幻想的な世界観や自然への深い愛情が称賛されてきました。しかし、生前は無名の作家であり、37歳で亡くなった彼の才能は、死後に家族の手によって世に知られるようになりました。この映画では、賢治を「天才作家」としてではなく、家族から見ると「ダメ息子」や「変わり者」だった一面に焦点を当てています。
例えば、賢治が質屋の家業を拒み、農業や宗教に没頭する姿は、政次郎にとっては理解しがたい行動です。しかし、菅田将暉が演じる賢治は、その頑固さや純粋さを通じて、観客に彼の内面的な葛藤や情熱を伝えています。特に、妹トシの死をきっかけに創作に没頭するシーンでは、賢治の繊細さと執念が際立ち、彼の文学が単なる空想ではなく、現実の痛みから生まれたものであることが伝わります。この視点は、賢治の伝記映画としては異例であり、彼の人間性をより身近に感じさせる魅力となっています。
2. 家族愛の深さと普遍性
本作のもう一つの大きな見どころは、宮沢家の家族愛の描写です。政次郎は、長男である賢治に家業を継がせようとしますが、彼の自由奔放な生き方を止められません。それでも、賢治が病に倒れた時やトシが亡くなった時、政次郎は献身的に家族を支えます。役所広司の演技は、厳格さと優しさを併せ持つ父親像を見事に体現しており、観客に深い感動を与えます。特に、賢治の死後、彼の作品を世に出すために努力する姿からは、息子への無条件の愛と誇りが伝わってきます。
また、森七菜が演じるトシの存在も重要です。彼女は賢治の文学的才能を信じ、彼を励まし続ける妹として、家族の絆を象徴しています。トシが結核で亡くなるシーンは、みぞれが降る中での葬送曲とともに描かれ、観客の涙を誘います。この場面での菅田将暉と役所広司の熱演は、悲しみと同時に希望を感じさせるもので、家族の喪失と再生が交錯する瞬間として記憶に残ります。
母・イチ（坂井真紀）や祖父・喜助（田中泯）も、少ない出番ながら家族を支える存在として印象的です。特に田中泯の厳格でありながらユーモラスな祖父像は、宮沢家の歴史と伝統を体現しており、物語に深みを加えています。このように、本作は個々のキャラクターを通じて、時代を超えた普遍的な家族愛を描き出しており、観客自身の家族との関係を振り返るきっかけとなるでしょう。
3. 成島出監督の演出と映像美
成島出監督は、「八日目の蝉」や「いのちの停車場」など、人間関係や絆をテーマにした作品で知られています。本作でも、彼の得意とする繊細な演出が光ります。特に、岩手県花巻の自然を活かした映像美は、賢治の文学世界を彷彿とさせます。賢治が耕した「下ノ畑」や、彼が暮らした羅須地人協会での撮影は、作品にリアリティを与えるとともに、観客を賢治の故郷へと誘います。
印象的なシーンとして、トシの火葬場面が挙げられます。このシーンは、日没のマジックアワーにワンテイクで撮影されたもので、菅田将暉と役所広司の感情が爆発する演技が際立っています。自然光の中で描かれる悲しみと静寂は、映画館の大スクリーンでこそ味わえる迫力があります。また、ラストシーンでは、賢治の代表作「銀河鉄道の夜」を思わせる幻想的な映像が展開され、史実とは異なる創作的な結末が感動を増幅させます。この演出は、賢治の文学が死後も生き続けることを象徴しており、観客に希望を与えるフィナーレとなっています。
4. 豪華キャストの演技力
本作のキャストは、日本映画界を代表する俳優陣が揃っており、彼らの演技力が物語を一層引き立てています。役所広司は、威厳と愛情の間で揺れる政次郎を自然体で演じ、観客に父親としての苦悩と喜びを伝えています。一方、菅田将暉は賢治の純粋さと脆さを絶妙に表現し、彼の内面の複雑さを観客に感じさせます。特に、トシの死後に物語を書き続けるシーンでは、菅田の繊細な表情が心を打ちます。
森七菜のトシは、賢治を支える明るさと儚さを兼ね備えており、短い出番ながら強い印象を残します。坂井真紀や田中泯も、それぞれの役に深みを与え、家族全体の調和を演出しています。このように、キャスト一人ひとりがキャラクターに命を吹き込み、観客に感情移入させる力があります。
5. 主題歌「STAR」と音楽の力
主題歌「STAR」は、いきものがかりが本作のために書き下ろした楽曲で、吉岡聖恵の透き通る歌声が物語の余韻を高めます。作詞・作曲を手掛けた水野良樹は、「誰かを肯定する瞬間を優しく包み込む曲にしたい」と語っており、家族愛をテーマにした本作にぴったりのメロディとなっています。吉岡自身も、出産を控えた時期に歌唱したことで、親子の絆を意識しながら歌ったと述べており、その温かさが楽曲に込められています。映画のエンディングで流れるこの曲は、涙を誘うとともに、希望を感じさせる締めくくりとなっています。
まとめ
「銀河鉄道の父」は、宮沢賢治の生涯を父・政次郎の視点から描いた感動作であり、家族愛、個人の夢、そして喪失と再生をテーマにした普遍的な物語です。賢治の新たな一面を浮き彫りにする視点、豪華キャストの演技、成島出監督の繊細な演出、そして主題歌「STAR」が織りなす感動は、観客の心に深く響きます。岩手の自然を背景に描かれる宮沢家の絆は、現代を生きる私たちに家族の大切さを改めて教えてくれるでしょう。映画館を出た後、故郷の親に連絡したくなる、そんな温かい気持ちにさせてくれる作品です。
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