京都の太秦と言えば、かつては日本映画隆盛期の頃には大映、東宝、日活、松竹などの撮影場が集中し、日本のハリウッドと呼ばれるほど、時代劇を中心に数多くの映画が製作されました。
黒澤明監督『羅生門』（1950年、第12回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞）、溝口健二監督『雨月物語』（1953年、第14回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞）、『山椒大夫』（1954年、第15回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞）、衣笠貞之助監督『地獄門』（1953年、第7回カンヌ国際映画祭パルム・ドール）など、世界にも認められた作品も京都太秦で生まれました。
現在もかつての賑わいはないものの、京都東映撮影所、松竹撮影所で多くの映画、TVドラマが作られています。
そんな日本映画の故郷、京都太秦を舞台にした映画作品を紹介します。
『嵐電』（2019年）
嵐電は京福電鉄嵐山線の愛称
「嵐電」とは京都市下京区の四条大宮駅から右京区の嵐山駅までを結ぶ嵐山線、北区の北野白梅町駅から右京区の帷子ノ辻駅までを結ぶ北野線を合わせた京福電気鉄道路線の愛称です。呼称は「らんでん」。
東映映画村や嵐山を訪れる観光客の交通手段として、また沿線住人の足として嵐電は愛されています。
嵐電沿線で繰り広げられる三組の恋の行方
井浦新演じるノンフィクション作家平岡衛星が嵐電沿線の安アパートに住み込み、嵐電にまつわる逸話を取材中に遭遇したふたつの恋の物語。
自身もかつてこの街で過ごした妻・斗麻子との思い出も絡めながら三つの恋物語を描いていきます。
青森から修学旅行でやってきた女子学生・北門南天と嵐電を8ｍｍカメラで撮影する鉄道オタクの少年・有村子午線との恋物語。
北門南天を演じるのは窪瀬 環。京都造形芸術大学映画学科・俳優コース卒業後、フリーの役者として活動している女性です。劇中、福井訛りを感じたましたが、やっぱり福井出身。
有村子午線を演じるのは同じく京都造形芸術大学映画学科映画製作コース在籍中の学生さん。
八ツ橋のキャラクターをラッピングした嵐電電車「夕子さん電車」を背景に写したカップルは結ばれるという都市伝説に導かれ、南天は子午線に強く惹かれ、修学旅行終了後、青森を飛び出し、京都の子午線の元へ家出して来ます。
太秦撮影所の近くのカフェで働く小倉嘉子と東京から撮影のためにやってきた新人俳優・吉田譜雨との恋物語。
小倉嘉子を演じるのは大西礼芳。京都造形芸術大学映画学科俳優コース卒業後は多くの映画、TVドラマに出演している実力派俳優として注目を集めています。
吉田譜雨を演じるのは金井浩人。NHK大河ドラマ「西郷どん」で伴兼之役を演じていた若手俳優です。
譜雨が主演となる映画にエキストラとして参加することになった嘉子。セリフ合わせと称して譜雨からデートに誘われた嘉子は始めのうちは戸惑いを憶えながらも、次第に彼に惹かれていきます。始めて交わした口付けのあと、駅に停車した嵐電電車。怪しげなキツネとタヌキの車掌に導かれるまま、電車に乗り込んだふたりだが、嘉子がふと周囲を見回すと、譜雨の姿が忽然と消えていました。キツネとタヌキの車掌が乗り込む嵐電に乗ったカップルには別れが訪れるという都市伝説が。
嵐電に纏わる都市伝説を取り入れて、三組の恋物語をファンタジックに描いた秀作です。
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『太秦ライムライト』（2014年）
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斬られ役・福本清三初主演作
主演は東映時代劇の斬られ役で、「五万回斬られた男」として名を馳せる福本清三。彼の55年間の俳優人生の中で、本作が初主演作となります。
チャールズ・チャップリンの名作『ライムライト』をモチーフに、京都太秦で多くの時代劇を製作し、支えてきた人々の姿を描いています。
古参時代劇俳優と若手女優の子弟愛と再生
本作は時代の流れの中で、行き場を失った古参老俳優が、スター女優に成長したかつての弟子からの導きにより、ふたたび華やかな舞台に立つまでの過程をノスタルジックに描いた傑作です。
時代の流れと共に時代劇の製作がなくなり、仕事を失った福本演じる古参俳優の香美山は新人女優のさつきと出会います。彼女から殺陣の指導を請われ、いつしか師弟のような関係に。
さつきは殺陣をきっかけに東京に進出。そしてスター女優となるまでに活躍します。
さつきが主演となる大型時代劇作品が太秦で撮影されることになり、さつきは引退した香美山に共演してもらうように懇願。しかし、体調を理由に香美山は復帰を拒みます。
一か月後、撮影所に香美山の姿が。彼は最愛の弟子であるさつきに斬られるために撮影に参加したのです。
本作は2014年のファンタジア国際映画祭でシュバル・ノワール賞（最優秀作品賞）、福本清三は日本人初の最優秀主演男優賞を受賞しています。
有名俳優が脇役で共演
時代劇有名俳優の松方弘樹、栗塚旭や小林稔侍、萬田久子などベテラン俳優も共演しています。
若手アクション女優・山本千尋デビュー作
元武術太極拳選手で女優デビューした山本千尋のスクリーンデビュー作品であり、初主演作品にもなりました。
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『京都太秦物語』（2010年）
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立命館大学映像学部の学生が客員教授だった山田洋次の指導の下製作した作品。
太秦大映通りにあるクリーニング店の娘・京子が幼馴染である康太、客員大学講師の榎大地の間で揺れる恋の行方を描いています。
ヒロイン京子を海老瀬はな、康太をEXILEの宇佐美吉啓が演じ、他著名な俳優は田中泯が守衛役で少し登場しているだけ。
大映通りの実際の店主らがエキストラで出ていて、かなりローカルな雰囲気です。
太秦という町の雰囲気とオーソドックスな恋愛模様に、何か懐かしい昔ながらの人情映画を観るようです。
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