『パラサイト 半地下の家族』で2019年アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞したポン・ジュノ監督。
彼が2014年に脚本、プロデュースした作品『海にかかる霧』をハリウッドでリメイクすることが報じられました。原題は『Sea Fog』。Netflix映画『最悪の選択』監督・脚本のマット・パーマーが監督・脚本を務め、ポン・ジュノがプロデュースを担当するとのこと。
『海にかかる霧』とはどんな作品なのか?
本国韓国で公開されたのが2014年8月13日、日本で公開されたのが翌年の2015年4月24日で今から6年前の作品となります。
実際に起こった「テチャン号事件」をモデルにしている
本作は2001年に韓国で起こった「テチャン号事件」をモデルにしています。
中国人密航者をテチャン号で輸送中、船員らが全南莞島郡麗瑞島(ワンドグン・ヨソド)から南西12マイルの海上で網倉庫の出口を密閉、重さ1tの漁具などで覆い、閉じ込められた中国人らは外に出られず、25名が窒息死。7日後に船員たちが発見し、遺体を他の密入国者の手を借りて海に水葬した。
事件の被害者は中国人ですが、映画では朝鮮族の密航者となっています。
老朽化した漁船の中で起こる非人道的な出来事
本作の舞台は漁船チョンジン号。不漁が続いていることで収入がないため、修理もできないまま老朽化しています。
せめて船員たちの給料を出そうと、キム・ユンソク演じる船長のチョルジュは仕方なく中国の朝鮮族密航者を運ぶ仕事を請け負います。
密航決行の夜、嵐の中で中国船から密航者をチョンジン号に乗り移らせますが、密航者の中の若い一人の女性ホンメが荒れ狂う海に転落してしまいます。
パク・ユチョン演じる船員ドンシクは海に飛び込みホンメを救出。やがて二人は深い仲になっていきます。
なんとか密航者を船に乗せることに成功し、約束の場所へ向かう途中、海洋警察の巡視船が現れます。慌てて密航者たちを魚倉庫に隠し、海洋警察の巡回をやり過ごすことができましたが、魚倉庫内の冷凍機の故障によるガス漏れが発生、ドンシクにより機関室に匿われていたホシメ以外の密航者は全員死亡してしまいました。
チョルジュは乗組員たちに遺体を切り刻んで海に捨てるよう命じます。魚の餌にすることで事態を闇に葬ろうとしたのです。また遺品を遺族に返すよう提案した船員たちを殺戮しようとします。
ドンシクはホンメを守ろうとしましたが、機関室に逃げ込んだ他の船員に発見されてしまいます。ドンシクは彼を殺害、その後チョルジュへ戦いを挑みます。
船員思いのチョンジン号の船長チョルジュが不況から闇の仕事に手を出し、不測の事故により非人道的な人間に変化していくありさまが克明に描かれ、人間がいかに弱い存在であるかが思い知らされます。
ホンメの登場と不測の事態によって、6人の船員の絆が乱れていく様からも人間の絆がいか脆いものであるかを感じさせてくれます。
韓国有名俳優が出演
キム・ユンソク、ムン・ソングン、日本の映画『焼肉ドラゴン』にも出演したキム・サンホなど韓国映画に欠かせない俳優たちや東方神起、JYJのメンバーとして人気だったパク・ユチョンが出演しています。
ホンメ役のハン・イェリ、美人ではないけれど
船員たちの絆を乱す元凶となったホンメを演じたのはハン・イェリ。
本作以外の出演作は『ハナ 〜奇跡の46日間〜』(2012年)、『ザ・スパイ シークレット・ライズ』(2013年)、『ファイティン!』(2018年)。
美人とはいえない容貌ではありますが、何かそそるものを感じます。どこにでもいそうな身近感がそういう思いにさせるのか?
本人も容姿にハンデを感じているそうで、幼い頃から取り組んだ舞踏も人一倍努力したそうです。
ハリウッド版はどこが舞台になる?
リメイクされるハリウッド版『Sea Fog』。果たしてどこを舞台にするのでしょう?同じ韓国ならリメイクする必要もないですからアメリカが舞台になるのかな?