デンマークの映画ってあまり馴染みがないと思われている方が多いと思いますが、結構名作揃いなんですよ。
刑事コンビが迷宮入りの事件を再捜査する『特捜部Q』シリーズや緊急通報指令室のオペレーターの活躍を描いた『THE GUILTY/ギルティ』、マッツ・ミケルセンが酒豪高校教師を演じる『アナザーラウンド』など。
デンマーク映画の特徴として、社会的テーマを扱い、登場人物の感情や心理を細かく表現していく作品が多いことでしょうか。
今回は中年女性と義理の息子の情愛を描いた2019年作品『罪と女王』を紹介します。
この映画は、デンマークのアカデミー賞にあたるロバート賞で作品賞をはじめとする主要9部門を受賞したほか、サンダンス映画祭で観客賞を獲得するなど、高い評価を得た作品です。日本では2020年6月に公開されましたが、残念ながら劇場で見ることができなかった方も多いのではないでしょうか。
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罪と女王(字幕版)
『罪と女王』あらすじ
児童保護を専門とする優秀な弁護士のアンネは、医師の夫ペーターと幼い双子の娘たちと郊外の美しい邸宅で幸せに暮らしています。そんなある日、ペーターの前妻との間に生まれた17歳の息子グスタフが、母親とスウェーデンで暮らしていた学校を退学になったため、彼を引き取ることになります。粗暴で反抗的なグスタフは家族になじもうとせず、しかも家から貴重品を盗み出す事件を起こします。アンネはグスタフを警察に突き出さない条件として家族と打ち解けるように言います。これをきっかけにグスタフは妹たちだけでなく、アンネとも距離を縮めていきます。しかし、グスタフが若い女友だちを家に連れ込み、性行為をしている姿に、アンネは自らの肉体の衰えや夫との性生活への不満を痛感します。そして、ついにアンネはグスタフの部屋に入り込み、彼と肉体関係を結んでしまいます。二人は家族の目を盗んで欲望の赴くままに関係を続けますが、ある日、妹リナに二人の関係を知られてしまいます。アンネは保身のために一方的にグスタフとの関係を絶ちますが、それが彼を絶望へと追いやってしまうことになります。
『罪と女王』見どころ
この映画は、家族の秘密や裏切り、欲望や罪悪感など、人間の複雑な感情を深く掘り下げた作品です。アンネは、仕事では正義感に溢れた弁護士として活躍し、私生活では幸せな家庭を築いていますが、その裏で自分の肉体や感情に不満を抱えています。
グスタフは、母親から捨てられたことで孤独感や怒りを抱えており、アンネに対しては憎しみと愛情が入り混じった感情を持っています。
二人の関係は、最初は互いに救い合おうとするものでしたが、次第に破滅的なものに変わっていきます。
映画は、127分という長さですが退屈させない見せ方がうまいです。カメラワークや編集が巧みであり、登場人物の表情や仕草に注目させられます。特に、アンネとグスタフの関係が発覚した後の展開は、緊迫感や衝撃があります。また、音楽も効果的に使われており、場面の雰囲気を高めています。
演技も素晴らしいです。トリーヌ・ディルホムは、アンネの内面の変化や葛藤を見事に表現しており、多くの映画賞で主演女優賞を受賞したのも納得できます。
グスタフ・リンは、新人ながらも義理の母親と関係を持つ少年の苦悩や絶望を迫真の演技で伝えており、注目される俳優です。
『罪と女王』は、家族ドラマとしてもサスペンスとしても楽しめる作品です。しかし、同時に人間の心理や道徳について考えさせられる作品でもあります。
アンネは自分の行為に対して責任を取れるのか?グスタフは自分の運命に抗えるのか?そして、私たちは彼らをどう評価するのか?この映画は、観客にそう問いかけてきます。
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