今回紹介するのはスペイン・アルゼンチン合作の『家(うち)に帰ろう』という作品です。
WOWOWで2020年1月6日に放送されたもので、スペインとアルゼンチンの合作映画で、WOWOWでなければ出会わなかった作品のひとつです。
原題は「EL ÚLTIMO TRAJE」(最後のスーツ)
邦題は『家(うち)へ帰ろう』ですが、原題(スペイン語)は『EL ÚLTIMO TRAJE』で直訳すると『最後のスーツ』。
タイトル通りスーツが物語の重要なアイテムとなっています。
主人公は88歳の老人の男
本作の主人公はアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに住む88歳になるアブラハムという名の男。
頑固で高慢な正確の彼は子供たちから疎まれ、自宅を含めたすべての財産を奪われ、老人ホームに入居させられる寸前の状態。
彼は子供たちから逃げるために、故郷であるポーランドへ旅立つ決心をします。
ポーランドへ行こうと決めたのは、70年前の約束を果たすためでした。
命を救ってくれた恩人に会うため旅に出る
主人公アブラハムは70年前の戦時下に自分の命を救ってくれた同年配の恩人に会い、彼のために作ったスーツを届けようと思い立ったのです。
ブエノスアイレスからマドリード、パリを経由して、ポーランドに着くまでの旅程を描いたロードムービーの始まりです。
第二次世界大戦時に迫害を受けた過去
70年前の戦時下に彼に何があったのか?
ユダヤ人であった彼はナチスから激しい迫害を受けていました。
ホロコーストを受ける前に逃げ出した彼は、命からがらワルシャワにある自分の家に戻るのですが、すでに縫製職人の父親の弟子であった男の家族が住んでおり、家には入れてもらえそうになかったところ、親友でもあったその息子が強引に瀕死の彼を保護し、快方してくれたのです。
ナチスのユダヤ人の迫害を題材にした映画はたくさんあって、それぞれ詳細な状況が描写されていることが多いですが、本作では回想シーンとして断片的に映し出されるだけで、多くは描写されていません。それは本作が戦争の悲惨さをメイン題材とした作品ではないからでしょう。
旅の途中での様々な出会い
マドリードまでの飛行機の中で知り合った礼儀知らずの若い男、マドリードの安宿の女主人、パリからドイツまで列車で一緒になった文明学者の女、ワルシャワの病院の看護師の若い女など様々な人たちとの助けを借りながら、彼は無事に目的地に到着します。
感動のラストに涙する
長旅の末、看護師に車椅子を引かれて、目的地である70年前に住んでいた場所に到着できたアブラハム。
命の恩人はすでに亡くなったのかも、または別の場所に引っ越してしまったかもと不安を隠しきれませんでしたが、視線を見上げた店の窓越しに老いた旧友の姿を見つけます。
旧友も彼に気づき、「アブラハム、家へ帰ろう」とやさしく彼を招き入れるのです。
邦題はこの言葉から付けられたのですね。原題の『最後のスーツ』よりはストーリーに入り込みやすいかな。
老後の安らぎの場所は故郷なのか?
高齢になったアブラハムは家族から疎まれ、長年住み慣れた家まで奪われてしまう。頼みの家族も結局は頼りになりませんでした。
壮絶な体験をしてきた故郷ですが、旧友が存命していたことで、安らぎの場所となったわけなんですね。
そういえば、僕も60代になって、小学校、中学校のクラス仲間とLINEで連絡を取り合うようなっています。歳を取ると若い頃の思い出に安らぎを感じてしまうのでしょうか?
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