AIは人類を幸福にできるのか?AIが暴走した近未来を描いた『AI崩壊』とAIを描いた4つの作品

すべての国民の健康情報が一元管理される社会が舞台『AI崩壊』

すべの国民の健康がAI(人工知能)によって管理されている今から10年後の2030年を舞台にした入江悠監督作『AI崩壊』。

2020年1月31日劇場公開で、僕は10日後の2月11日に鑑賞しました。

大沢たかおがAIを開発した科学者を演じる

主演は大沢たかお。過去、同じジャンル作品の『藁の楯』(2013年)、『ミッドナイト・イーグル』(2007年)で主演を務めています。

『藁の楯』では刑事、『ミッドナイト・イーグル』ではカメラマン、今回の『AI崩壊』ではAIを開発した天才科学者を演じています。

大沢たかおは硬派な役柄がよく似合います。真面目で真っすぐ、少しばかり融通が利かない、そんな感じの堅物な男。

本作では妻を病気で亡くし、彼女と開発を進めていた医療AI「のぞみ」の実用化を成し遂げたあと、一人娘を連れて海外へ移住し、第一線から退きます。

人類の健康管理をしていたAIが暴走、世界はパニック状態に

本作は10年後の2030年の近未来を舞台としています。少子高齢化、経済格差が進み、人口の4割が高齢者と生活保護者というリアルな未来。

人類の健康管理を一手に行っていたAI「のぞみ」がある日突然、暴走を始めます。

この種のAIもの作品でよくあるパターン、というよりAIが暴走しないと物語にならない、つまりお約束のパターンの始まりです。

AIが必要のない人間を選別し、抹殺を始める

本作の最大の特徴というか恐怖は、AIが必要のない役に立たない人間を選別し、抹殺を始めるというところです。

医療AIなので、年齢、住所、職業など基本的な情報以外に、過去の病歴や現在の健康状態も把握しているため、重要な職種に就いておらず、慢性的な病気を抱えている抹殺しても問題がないような人物を即座に選別できてしまうのです。

AI「のぞみ」を暴走させた犯人は誰なのか?警察はAI開発者である大沢たかお演じる桐生に疑いをかけ、彼を逮捕しようとします。

AI「のぞみ」による人類の選別が始まろうとするなか、逃げる桐生と警察の逃亡劇が繰り広げられます。これが本作の面白さなのです。

警察も独自でAIを開発。開発メンバーの中心人物は岩田剛典演じる警視庁警備局理事官・桜庭。警察AIは日本中のすべての通信網にアクセスでき、逃げ惑う桐生の様子を監視カメラ、車載カメラで追跡していきます。

桐生と警察AIの鬼ごっこ。街中の細い路地、地下下水道、はては航行中の貨物船の中まで。10年後の近未来の話ではありますが、いつか本当にこんな捜査が可能になることをリアルに感じさせてくれます。

時間がない、最愛の娘を救うために追っ手から逃れる

AI「のぞみ」が暴走する直前に、桐生の娘・心が落とした手鏡を探しに「のぞみ」の中枢であるマシンルームに侵入するのですが、同時に「のぞみ」が暴走開始。心はマシンルームに閉じ込められてしまいます。マシンルーム内はマイナス温度の極寒。寒さで気を失った彼女の体温が徐々に奪われ、数時間で低体温症で命が奪われてしまう。タイムリミットはあと僅か。桐生は娘を救うため、警察の追跡を逃れながら、娘の元に向かいます。

この切羽詰まった状況も本作を面白くさせている大きな要因のひとつになっています。

映画『AI崩壊』本予告 2020年1月31日(金)公開
映画『AI崩壊』本予告 2020年1月31日(金)公開

たたき上げ刑事役・三浦友和がいい味出してる

エリート警察幹部である桜庭と相対する現場主義の初老のたたき上げ刑事・合田を三浦友和が演じています。

AIを駆使して合理的に捜査を進めていく桜庭に対し、長年現場で培った経験を活かし、勘に頼る一見場当たり的に見える捜査をしていきます。彼の勘が見事に的中していく爽快さが堪らない。

年齢的に僕に近いこともあり、自分を重ねてしまいましたね。若い奴には負けねぇ。

ラスト近くでは桐生を助け、真犯人を追い詰めます。


今の日本の社会問題でもある少子高齢化、経済格差の拡大、AIに管理されたリアルな近未来社会を舞台にし、サスペンス、アクションを取り入れた本作は日本映画を代表する最高傑作です。

お勧め度:(3.7/5)

AIをテーマにした作品

アイ,ロボット (2004年)

ロボットとの共存が当たり前となった近未来を舞台とし、AIロボットの生みの親である博士が殺害されるという不可解な事件をウィル・スミス演じるデル・スプーナー刑事が謎の究明に乗り出します。

本作の主人公の一人でもあるサニーと名付けられたAIロボットのCG映像が少しばかり気持ち悪さを感じさせますが、ストーリーが進むうちに可愛く見えてきます。

AIをコントロールしているのが、USロボティクス社にある中枢コンピューター”ヴィキ”。ラストはスプーナー、サニーの両主人公と戦うことになりますが、中枢コンピューター反乱の設定は『AI崩壊』にも用いられています。


アイ,ロボット (字幕版)

お勧め度:(3.5/5)

トランセンデンス (2014年)

コンピュターに、脳にある情報をすべて移植することで、永遠に生きていくことができたら。意思が世界のネッワークに繋がったら、どんなことでもできる。こんな夢のようなことを映像化したのが本作です。

ジョニー・デップが人工知能PINNの開発研究者ウィルを演じています。彼は反テクノロジーを叫ぶ過激派グループに暗殺されてしまうのですが、レベッカ・ホール演じる妻エヴリンの手により、死ぬ間際の彼の脳内の記憶がすべてPINNの中に移植されます。

ウィルと合体したPINNは超高速の処理能力を持ち、軍事機密、金融、政治、個人情報など、ありとあらゆるデータを手に入れ、驚異的な進化を遂げて、人類を恐怖に陥れるのです。


トランセンデンス(字幕版)

お勧め度:(3.3/5)

her/世界でひとつの彼女 (2013年)

妻と別れて悲嘆に暮れる中年男が人工知能型OSであるサマンサとバーチャルセックスを楽しむうちに、やがて彼女を愛するようになる姿を哀愁たっぷりに描いた作品。

『ジョーカー』で2020年のアカデミー主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスが中年男セオドア・トゥオンブリー を、サマンサの声をスカーレット・ヨハンソンが演じています。

サマンサは何人ものユーザーがインストールしていて、自分のものだけではないと知ったセオドアは、自分の心の中に分かれた妻への想いが残っていたことに気付かされます。

iOSのAIである”Siri”が搭載されたのが2011年ですから、本作はSiriを参考にしたのかもしれませんね。 やがて”Siri” もサマンサのようになる日がくるのかしら。


her/世界でひとつの彼女(字幕版)

お勧め度:(3.0/5)

エクス・マキナ (2015年)

美しいプロポーションの人間型ロボットのポスターを見て、劇場で観たかった作品。

理想の女性像をしたロボットを創ることができたら、と思うのはすべての男の願望です。ロボットだから自分の要望には何でも答えてくれます。あんなこともこんなことも何でもしてくれるのです。

本作はそんな男の願望を満たしてくれる作品なんですが、それだけならB級以下のエロ作品。SFホラーらしい展開がきちんとあります。

AIロボットを演じるのはスウェーデン女優のアリシア・ヴィキャンデル。スウェーデン系とフィンランド系の血筋を引いているのですが、どこか東洋的な容貌を感じる彼女が演じるエヴァがとてもセクシーです。

ドーナル・グリーソン演じる主人公ケイレブがチューリングテストをするうちに、エヴァの知能がどんどん進化していきます。エヴァはケイレブが自分に対する愛情を感じ取るようになり、彼を利用するために彼を誘惑し始まるのです。そして、ケイレブにあるしかけをさせ、密閉された建物から脱出することに成功。彼女は自由を得るのです。

AI(人口知能)がやがて自我に目覚め、人間を巧みに支配していくことを暗示したSFの傑作です。


エクス・マキナ (吹替版)

お勧め度:(3.5/5)

まとめ

AIをテーマにした作品に共通するのは、AIは人類をサポートしてくれるが、より高度な機能を持たせると人類の脅威となりうることを告げています。

AIは人類に真の幸福を与えてくれるものではないということですね。