藤沢周平原作時代劇が面白い!秘剣あり恋あり

大衆時代小説作家の中で僕は藤沢周平が一番好きです。

藤沢周平の時代小説は庶民や下級武士の哀歓を描いた抒情的な作品が多く、テレビドラマや映画化された作品も多いです。

僕が藤沢周平の作品を読むようになったのも、映画化された作品の影響です。

藤沢周平時代小説の舞台と主人公像

藤沢周平の時代小説の舞台は一部例外はあるものの一貫して東北の架空の小藩である海坂藩。

実際にあった庄内藩(今の山形県)がモデルになっているようです。

登場する主人公は一見うだつが上がらない下級武士。
しかし、 秘剣と呼ばれる技を使う剣の腕はめっぽう強く、やがて藩の一大事に切り札として駆り出される。

物語の構図は現代の会社組織にも当てはまり、上司の機嫌を伺いながら、部屋の隅でシコシコ業務を熟していく。
普段は日の当たらない自分だけど、隠された実力があるんだ。

藤沢周平作品に登場する主人公に自分を当てはめる人は多いのではないでしょうか?

そういう僕もそうなんですけどね。

それでは藤沢周平原作の映画化された作品を紹介していきましょう。

山田洋次監督時代劇三部作

フーテンの寅さんが主役の『男はつらいよ』シリーズで有名な山田洋次が藤沢周平原作の時代劇を三本監督しています。

たそがれ清兵衛(2002年)

「たそがれ清兵衛」「竹光始末」「祝い人助八」 の3つの短編を原作として、山田洋次が監督、真田広之が主演を務めた作品。

本作で藤沢周平という作家を知った人は多いでしょう。

山田洋次は本作で初めて本格時代劇を監督しています。

大ヒットを収めた本作は第26回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。
山田洋次は最優秀監督賞、真田広之は最優秀主演男優賞を受賞しています。

真田広之はこのあと2003年公開の『ラストサムライ』に出演し、ハリウッド進出を果たしています。

たそがれ清兵衛という呼び名は、主人公井口清兵衛が幼い子供と認知症の老母の世話をするために夕刻の終業の太鼓の音とともにすぐに帰宅することから同僚たちが名付けたあだ名です。

借金を抱えた貧乏生活のために着の身着のままの汚い身なり。
そんな彼でも親友の妹である朋江からは慕われていて、彼女との淡い恋物語がストーリーの柱となりチャンバラ時代劇とは一味違う抒情的な味わいがある作品になっています。

朋江を演じるのが宮沢りえ。
彼女も本作で日本アカデミー賞主演女優賞を受賞しています。

本作のクライマックスが田中泯が演じる余吾善右衛門との決闘シーン。

田中泯は本作が映画デビュー作であり、日本アカデミー賞で助演男優賞を受賞、その後数々の作品に出演し、日本映画には欠かせない存在になっています。

ラストで結ばれるふたり、しかし悲しい別れが

妻の葬式代で刀を売ってしまった清兵衛は 余吾善右衛門に小太刀で立ち向かうのですが、満身創痍ながらも勝利します。

家に帰った清兵衛を待っていたのはふたりの幼い娘と彼の生還を祈っていた朋江。

しかし、ふたりの結婚生活も3年余り。

明治維新とともに勃発した戊辰戦争に参加した清兵衛は官軍の銃撃に撃たれてしまうのです。


たそがれ清兵衛

お勧め度:(4/5)

隠し剣 鬼の爪(2004年)

藤沢周平の作品には『隠し剣』と呼ばれる秘伝の技を使う武芸者を主人公にした作品が数編あります。

本作はその中の「隠し剣鬼ノ爪」「邪剣竜尾返し」 と、人情劇「雪明かり」 も含めた3本を原作としています。

主役の片桐宗蔵を永瀬正敏、恋の相手となるきえを松たかこが演じています。

身分違いの恋

松たかこが演じるきえは百姓の出でお手伝いとして片桐の家に仕えていた娘。
宗蔵はきえの存在に心を癒されていました。
しかし、身分の違いから自分の想いを伝えられずに悩みます。

隠し剣『鬼の爪』とは

『たそがれ清兵衛』と同じく、本作でもお家騒動が物語の柱となっています。

謀反を企てた小澤征悦演じる狭間弥市郎を家老の命により同じ道場の門下の関係から宗蔵が打ち取ることになります。

狭間と対戦した宗蔵に使った剣は「鬼の爪」ではなく、「龍尾返し」というもうひとつの秘剣。

「鬼の爪」はどんな秘剣なのか?

それがわかるのが、 狭間の妻を騙し、辱め、彼女を死に追いやった家老を城内で殺戮するシーンです。

「鬼の爪」とは剣を交えて戦う技ではなく、一瞬のうちに相手の胸を針のような小柄で突く暗殺剣だったのです。

ほのぼのとするラスト

人情ものを得意とする山田洋次監督作だけあって、本作のラストは武士を捨てた 宗蔵が蝦夷(今の北海道)へ向かう途中、郷里に帰っていたきえを訪ね、一緒に来て欲しいと素直な気持ちを告げます。

第28回日本アカデミー賞で、永瀬正敏は最優秀男優賞、松たかこは最優秀女優賞を受賞しています。


隠し剣 鬼の爪

お勧め度:(4/5)

武士の一分(2006年)

「盲目剣谺返し」を原作とした本作は木村拓哉が主人公・三村新之丞を演じて話題になりました。

山田洋次監督の「時代劇三部作」の完結編ともなる本作は興行収入が40億を超え、『おくりびと』が抜くまで松竹配給映画の歴代最高を記録していました。

主人公は海坂藩毒見役で毒にあたり盲目の剣士となる

木村拓哉演じる三村新之丞は藩の毒見役。
ある日、いつものように毒見を終えた新之丞だが、身体の異常を訴え意識不明に。
数日して回復したものの、毒の副作用で失明してしました。

医者から目はもう元には戻らないと告げられ、絶望する新之丞ですが、妻・加世の献身的な支えで落ち着きを取り戻します。

加世を演じるのは檀れい。
宝塚出身で、本作が映画初出演となります。

加世が顔なじみだった藩番頭の島田藤弥の取り成しで、三村家の30石は安堵が言い渡され、経済的には元の生活に戻ることができたのですが、加世は島田に身体を預けることを引き換えに家禄を安堵されていたのです。

それを知った新之丞は激怒し、加世を離縁。

あとで同僚から家禄の安堵は藩主の恩情からということを聞かされた新之丞。
島田が加世を騙していたことを知ると、武士の一分をかけて島田に決闘を挑みます。

目が見えない新之丞に勝ち目があるのか?

新之丞は剣術の師・木部孫八郎の元を訪れて、鈍った腕を叩き直します。

離縁されてもまだ新之丞を思う加世

苦戦しながらも孫八郎から教わった術を使い島田を追い詰めた新之丞は彼の左腕を切り伏せます。
致命傷を負った島田は後日切腹し果てます。

新之丞は加世を離縁したことを後悔しますが、 加世は飯炊き女として彼の傍にいたのです。

新之丞と加世は和解し、ふたたび共に暮らすようになりました。

本作も前2作と同様、ハッピーエンドで締め括られています。

お役目で盲目となった夫を一途に慕う妻・加世の姿に美しい夫婦愛を感じる方も多いのではないでしょうか?


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お勧め度:(3.5/5)

まだまだある藤沢周平原作時代劇

蝉しぐれ(2005年)

長編小説「蝉しぐれ」を映像化した作品で、2003年にNHK金曜時代劇ドラマとしても放送されました。

映画版で主役である牧文四郎を演じたのは市川染五郎で、彼を慕うヒロイン・ふくを演じたのが木村佳乃。

ドラマ版の方は文四郎を内野聖陽、ふくを水野真紀が演じています。

文四郎とふくは幼馴染で、お互い恋心を持ちつつも、すれ違いからそれぞれ違う人生を歩むことになります。

ふくは藩主の愛妾となり、藩主の子供を身籠り、それが元でお家騒動に巻き込まれます。

文四郎は命を狙われたふくを守るために、仲間と共に奮闘します。

やがて藩主が亡くなり、尼になることを決意したふくは出家する前に文四郎と会い、数十年越しにふたりは身体を合わせることに。

幼馴染との愛をテーマにした傑作時代劇です。


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お勧め度:(3.8/5)

山桜(2008年)

短編小説「山桜」を映画化した作品。

田中麗奈がヒロイン野江を演じ、彼女が慕う侍・手塚弥一郎 を東山紀之が演じています。

勝手な思い込みから弥一郎 との縁談を断った彼女が、やがて彼を慕うようになり、殺傷事件を起こし投獄された彼を彼の母と待ち続けます。

健気で一途な武家の娘を田中麗奈が好演しています。


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お勧め度:(3.3/5)

花のあと(2010年)

短編集収録の「花のあと」を映画化した作品。

剣豪であるヒロイン・以登を北川景子が演じています。

彼女が憧れていた剣豪が卑劣な罠にかかって自害。
彼女は事の真相を掴み、罠に嵌めた男を問い詰めようと密かに呼び出します。
居合の使い手である男に口を封じられようとしますが、彼女は懐剣で返り討ちに。

女剣士を演じた北川景子の凛々しい姿が印象的な作品です。


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お勧め度:(3.0/5)

必死剣 鳥刺し(2010年)

「隠し剣」の一編「必死剣 鳥刺し」を原作とした作品。

主演は豊川悦司で、藩政を憂いる藩士・兼見三左エ門を演じています。

側室に惑わされ、藩政を蔑ろにする藩主の目を覚まさせるべく、 兼見三左エ門 は藩主や藩士たちの目の前で側室を刺し殺します。

斬首を覚悟した三左エ門でしたが、意外にも軽い刑で済まされ安堵。
しかし、それは藩主たちの罠で、藩命として謀反人を倒したあと、彼も藩士たちになぶり殺しに会ってしまいます。

瀕死の状態で倒れた三左エ門が息を引き取る寸前に繰り出した秘剣「鳥刺し」によりすべての事件の黒幕であった中老・津田を見事に打ち取ります。

死んだと思われた三左エ門が突然繰り出した秘剣にびっくりしてしまいました。


必死剣 鳥刺し

お勧め度:(3.5/5)

小川の辺(2011年)

短編集「闇の穴」収録の短編小説が原作。

剣の達人である若き藩士・ 戌井朔之助を東山紀之が演じています。

藩命により、妹の夫である脱藩した元藩士佐久間森衛を討たねばならなくなった 朔之助の苦悩を描いています。


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お勧め度:(3.0/5)

闇の歯車(2019年)

時代劇専門チャンネルの開局20周年を記念し、藤沢周平の小説「闇の歯車」を映像化した作品。
テレビ放送の一か月前に劇場でも期間限定公開されました。

本作が藤沢周平原作の最新劇場公開作品となります。

瑛太が主演。
裏家業を生業とする男を演じています。

馴染みの酒屋で正体不明の初老の男から儲け話を持ち掛けられ、一度は断るものの惚れた女と暮らすため引き受けることにします。

サスペンス仕立ての時代劇で、ラストは物悲しいです。

瑛太主演「闇の歯車」劇場予告 | 2019年1月19日(土)より期間限定上映!
瑛太主演「闇の歯車」劇場予告 | 2019年1月19日(土)より期間限定上映!

お勧め度:(3.0/5)

「一茶」はいつ公開?

藤沢周平原作の「一茶」がリリー・フランキー主演で撮影が完了したものの、スポンサーの倒産でお蔵入りになりそうでしたが、昨年代わりのスポンサーが見つかったという情報が流れました。

まだ公開日が決まっていないようですが、いつになるのでしょうかね?

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