8月15日は今年で73回目の終戦記念日です。
WOWOWで録画しておいた『野火(2015)』、『ビルマの竪琴(1985)』を続けて鑑賞しました。
両作品とも大戦末期の東南アジア(フィリピン、ビルマ)の戦場を舞台にした作品ですが、それぞれ戦場の悲惨さを伝える描写に違いがありました。
戦場の悲惨な状況をリアルに描写した『野火(2015)』
原作は大岡昇平が1951年に発表した小説
原作は大岡昇平が1951年に「展望」に発表した小説です。作者自身がフィリピンで体験した戦場の状況がモデルになっています。
塚本晋也監督が自費で製作、自ら主演
塚本晋也監督が20年をかけて構想し、出資者が集まらなかったために自費で製作しています。
塚本晋也は鉄男シリーズ、悪夢探偵シリーズなど数々の作品を監督していますが、役者としても『シン・ゴジラ』、『沈黙 -サイレンス』など有名な作品に出演しており、役者としても素晴らしいキャリアを持っています。
本作には自身も主役として出演。
飢えと恐怖に慄きながら戦場を放浪する一等兵を好演しています。
リアルすぎる戦闘描写
戦争映画には銃撃、爆撃など戦闘シーンが登場しますが、本作の戦闘シーンはあまりにもリアル。
銃弾で吹き飛ぶ肉片、腕、脚、飛び出す脳髄などリアルすぎて気持ちが悪くなります。また飢えのあまり、人肉を求める描写もあり、戦場が舞台でなければホラー映画のようです。こういう描写が苦手な人は見ない方がいいでしょう。
戦場の悲惨さは十分に伝わった
過酷な状況下で人間がどうなっていくのか?リアルな姿を描くことで、その悲惨さが十分に伝わっています。
同胞でも信用ができない。いつ喰われるかわからない。
戦時下というのは人間性を狂わせてしまうのでしょう。
狂った日本兵の姿は滑稽にも見えてしまいました。
竪琴の美しい音色が心に染みる『ビルマの竪琴(1985)』
WOWOWで8月14日に放送されたものを鑑賞しました。WOWOWでの放送は今回が初回で、NHKBSプレミアムで放送されたものより画質も良く、音声はステレオ化されていました。
市川崑監督が29年後に自身監督作を再映画化
本作は市川崑監督が1956年に同じタイトルで映画化、29年後の1985年に再映画化した作品です。
話の大筋は1956年版と同じですが、中井貴一演じる水島上等兵の中盤行動は本作で追加されたもの。
原作は竹山道雄の児童向け創作作品
原作は竹山道雄が児童向けに書いた創作で、実話を元にしたものではないようですが、モデルになった人物はいたようです。
舞台は終戦直後のビルマ
東南アジア戦線という点では先の『野火(2015)』と同じような舞台ですが、『野火(2015)』が終戦前であるのに対して、本作は終戦直後となっています。そのため派手な戦闘シーンは最初の方に少し描写されるだけです。
ただし、主人公の水島の心情に変化を与えるために、日本兵の死体がたくさん描写されます。この描写で戦争が悲惨なものであるということを思い知らされます。
竪琴の美しい音色が感動もの
本作が他の戦争映画と大きく違うところは竪琴を使って癒しの効果を与えていることでしょう。
本作の最初から水島が奏でる竪琴に合わせて、日本兵たちが合唱するシーンが描かれます。
合唱の音源は東京混声合唱団、明治大学グリークラブ、明治大学混声合唱団らのもので、とても美しいハーモニーです。
仲間愛が描かれている
先の『野火(2015)』では人間性を失った日本兵が描かれていましたが、本作では行方不明になった同僚を想う日本兵の姿が描かれています。
仲間愛がテーマでもあるのでしょう。
本作が名作である由縁は、戦死した仲間たちを想い、現地で僧侶として供養することを決意した水島と水島と共に日本へ帰還することを願う同じ部隊の仲間たちの愛を描いたことでしょう。
水島が再び同僚の前へ姿を現し、無言のまま立ち去るシーンは感涙ものです。
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