好意を持った人に執拗に付きまとい、時には相手に危害を加えることもしてしまうストーカー。今回はそんなストーカーを題材にした邦画作品を紹介します。
『DOOR』~訪問販売員から執拗に狙われる団地妻
作品情報
1988年製作/95分/日本
配給:アウトサイド
日本初公開:1988年5月14日
監督:高橋伴明
脚本:及川中 高橋伴明
キャスト:高橋惠子、堤大二郎
あらすじ
都会の高層マンションに夫と幼い息子と暮らすヒロイン靖子。日々、かかってくる悪戯電話やセールスの電話に神経質になっていた彼女はある日、ドアチェーンの間から強引にパンフレットを差し込もうとしたセールスマンの指を挟んでしまいます。その翌日から執拗にそのセールスマンからストーカー行為を受けることになります。彼の行為は日を追うごとにエスカレートしていき、ついには靖子たちが住む部屋に侵入、血みどろの惨劇が始まります。
解説
まだストーカーという言葉が生まれていない1988年の作品です。
高橋監督の妻でもある高橋惠子が主演を務め、堤大二郎がストーカー化したセールスマンを怪演しています。
マンションの一室という閉鎖されたスペースで狂気に満ちたセールスマンの男が執拗にひヒロインを追い求める姿は恐怖です。
さらに、幼い我が子を守るために必死で抵抗する彼女が取った行動がスプラッター映画さながらで、血みどろシーンでクライマックスを迎えます。
本作は埋もれていた貴重なネガが発見されたのを機にデジタルリマスター化され、2023年2月25日劇場リバイバル公開されました。
『アンダー・ユア・ベッド』~一途な片思いから狂気の行動へ
作品情報
2019年製作/98分/R18+/日本
配給:KADOKAWA
監督:安里麻里
原作:大石圭
脚本:安里麻里
キャスト:高良健吾、西川可奈子
あらすじ
家でも学校でも誰からも必要とされることがなく、誰からも名前を呼ばれることがなかったその男に「三井くん」と名前を呼んでくれたたったひとりの女性。学生時代の甘い思い出から11年経った頃、男は彼女の住まいを探し出し、近所に熱帯魚店を開きます。住居とした階上の部屋から女性の家を観察し始めますが、彼女の様子がおかしいことに気が付きます。
彼女に何が起こっているのか?彼女への純粋な想いから彼女の家に忍び込みます。夫婦のベッドの下に潜り込んだ男は観察をし始めました。そして、彼女は夫からの暴力に日々耐え続ける生活を送っていることを知ります。
夫からの暴力に耐えかねた彼女が救いを求めたとき、男はついに行動を起こします。
解説
高良健吾が、恋した女性を監視するためベッドの下に潜り込む主人公を演じています。
本作は、ストーカーというタブーを題材にした作品でありながら、主人公の純粋な愛情や、ヒロインの苦しみが描かれています。また、ベッドの下という閉鎖的な空間を舞台に、緊張感と不穏な雰囲気が演出されています。
本作で注目すべきなのは、ヒロイン役の西川可奈子の演技でしょう。華奢な身体を惜しげもなく披露し、アダルト女優を思わせる大胆なシーンに挑んでいます。そのため、本作はR18+指定となっています。
高良健吾の繊細な演技と、西川可奈子の迫真の演技が光る作品であり、ホラー映画ファンだけでなく、人間の愛情や孤独について考えさせられる作品となっています。
『だれかの木琴』~平凡な主婦の深層にある狂気
作品情報
2016年製作/112分/G/日本
配給:キノフィルムズ
監督:東陽一
原作:井上荒野
脚本:東陽一
キャスト:常盤貴子、池松壮亮
あらすじ
夫と娘の3人暮らしの平凡な主婦・親海小夜子は越してきた新居の近くに美容院を見つけ客となります。彼女の担当になった美容師・山田海斗から帰宅後に受け取った営業メールをきっかけに心の変化が芽生えます。営業メールに返信を続けたり、海斗との会話から知った彼の自宅へ出向いたり、次第に海斗への執着がエスカレートしていきます。彼女の行動に海斗も危険を感じ始めます。
解説
本作は井上荒野による小説を原作として、常盤貴子演じるヒロインが池松壮亮演じる美容師へ執着していく様子を描いています。
ただし、先に紹介した2作品とは異なり、衝撃的な事件は起こりませんが、どこにでもいそうな平凡な主婦がある些細な出来事をきっかけに変化、きっと何かを起こすだろうと観るものに期待を抱かせ、知らないうちにラストまで観てしまうことになります。
衝撃的な事件が起こらない分、つまらない作品と感じそうですが、誰でもストーカーになる要素を持っていることを知らさせ、そういう面ではとても怖い作品です。
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