昨年あたりからwowowやPrimeVideoでロシア産SF作品を観る機会があり、クオリティの高さに驚かされました。
昨年観たのは『アトラクション 制圧』(2017年)とその続編となる『アトラクション 侵略』(2020年)。
アトラクション2部作は宇宙人もの作品ですが、異星人侵略がテーマではありません。宇宙船の故障で地球に不時着し、宇宙船を修理するため、異星人科学者が地球人の女性の協力を得る中、やがて恋人関係になっていくというラブストーリーなのです。
派手な爆撃シーンが多い侵略物SFが苦手な方にはぜひ観て欲しい作品です。
▼Amazon Primeで鑑賞アトラクション 制圧(字幕版) ▼Apple TVで鑑賞
今回紹介する作品は同じロシア産SFで、2021年日本で公開された『スプートニク』。wowowで2022年1月初めに放送されたものを鑑賞しました。
宇宙飛行士に寄生して地球に侵入する宇宙生物
『スプートニク』の原題は『Спутник』。邦題はロシア語の原題をそのままカタカナ表記しただけですが、意味は「付随するもの」。
原題が示すように本作は宇宙飛行士の体内に寄生した宇宙生物が地球に侵入し、軍部研究施設で人間を襲う話です。
ストーリー
2名の宇宙飛行士を乗せた宇宙船が何者かに襲われる
本作の舞台となっているのは冷戦末期の1983年。宇宙飛行を終えた二人の飛行士を乗せた宇宙船が地球に帰還中に得体の知れない何かに襲われ、カザフスタンの原野に不時着。飛行士の一人は頭部を抉られた状態で死亡、もう一人のコンスタンチンも重傷を負って発見されます。
そして、コンスタンチンはセミラドフ大佐が管理する軍事研究施設に収監され、24時間監視された個室で治療を受けることになります。
宇宙生物は深夜になると宇宙飛行士の体内から外へ
セミラドフ大佐から依頼を受け、精神科医師であるタチアナ・クリモワが施設にやってきます。
彼女はコンスタンチンの診察を行ううち、彼の体内に宇宙生物が寄生していること、深夜になると彼の体内から口を通して外に出てくることを知ることになります。
宇宙生物が二人の宇宙飛行士のうち寄生対象としてコンスタンチンを選んだのは、もう一人の飛行士に癌があったことから。宇宙生物は健康な身体を持ったコンスタンチンを選んだのです。
宇宙生物はコンスタンチンの体内に潜んでいるときは小さく、体外に出ると大きくなるという特性がありました。
さらに宇宙生物は宇宙船不時着の事故で重傷を負った彼の身体を驚異的な速さで修復していたのでした。つまり寄生ではなく、共生しているのです。
宇宙生物の餌は恐怖
宇宙生物は何を餌にして生きているのか?
タチアナは同僚の研究員から衝撃の事実を見せられることになります。
施設には犯罪を犯した囚人も収監されていたのですが、囚人の一人が檻の中に入れられ、その檻に宇宙生物が放たれました。そして、宇宙生物は怯えた囚人に襲いかかり、頭部を抉り、脳を貪り喰い始めました。
のちにタチアナは宇宙生物が人間が恐怖を感じたときに脳から分泌するコルチゾールという物質を餌にしていることを付き止めます。
宇宙生物を兵器にしようとする組織との対決
タチアナはセミラドフ大佐が宇宙生物を生物兵器にして、政府転覆を狙っていることに気が付きます。
それを阻止するため、コンスタンチンを連れて施設を脱出しようとしますが、傭兵たちに囲まれてしまいます。万事休すとなったとき、彼女はコンスタンチンに注射器を渡します。注射器には彼の身体を病態とする薬剤が入っていました。
コンスタンチンが薬剤を体内に入れたとき、病気を感知した宇宙生物が彼の身体から出てきました。そして宇宙生物は恐怖を感じた傭兵たちに襲いかかります。
宇宙生物の造形と性質が個性的
まず注目したいのが本作に登場する宇宙生物の造形です。
無毛でぬるっとした表皮に細い四本の脚と長い尾、頭部は大きな耳のような両翼、顔面らしき部位には蜘蛛のような多数の複眼を持つ形状で、過去観たSFモンスター作品ではお目にかかったことがない個性的な造形です。
また性質も個性的です。体内に侵入した人間の肉体と同化し、宿主である人間が大怪我をしてもすぐに修復させてしまいます。宿主が死んでしまうと宇宙生物自体も死滅してしまうからです。
記憶も同化しているので、宇宙生物が体外で行った殺戮行動も宿主である人間の記憶に残ります。
抒情的なドラマ性があるストーリー
本作はただモンスターが暴れまくるだけの話ではありません。
宿主となったコンスタンチンの離婚歴や施設に預けた子供の存在、ヒロインとなるタチアナにも過去の仕事上のトラブル、暗い生い立ちを設定することでストーリーに深みを持たせ、人間ドラマとしての見応えもあります。
終盤近くでは強敵であったはずの宇宙生物を応援している自分に気が付くはずです。
冒頭に紹介したアトラクション2部作も含め、ロシア産SF作品のドラマとしてのクォリティの高さに脱帽です。
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